2018年12月29日土曜日

tbs1126記事:11月26日のTBS番組「私の何がイケないの?」に無性愛の人が出演(長文)


2012年のTBS番組で無性愛(エイセクシュアリティ)の方が出演されました。
番組は11月26日の「私の何がイケないの?」http://www.tbs.co.jp/naniike/(有田哲平氏、江角マキコ氏がMC)の「結婚しない女性SP」です。最後のほうに、顔にぼかし入り、仮名で登場され、MCと出演者たちとのやりとりがありました。

見るまでハラハラしました。
私自身の今までの、カムアウトの際に経験したネガティブな思い出が頭をよぎったからです。
「将来変わることもあるよね?」
「恋愛しないと子どもができないから、少子化につながる」
無言でその後連絡して来なくなった人たち・・
スタジオでこれが再現されるのだろうか。


でもそんなことはありませんでした。
まず「アセクシャル(asexual)=無性愛」というワードが示され、カナダのBrock大学心理学部教授のアンソニー・ボガート氏(今年「Understanding Asexuality」という著作を出版)による第四の性であるasexualの説明。
そのあと、無性愛の人(田名明日香さん・仮名、29才)の話に。田名さんの今までの過去が再現されました。
自分が周りと違う事に気づいた学生時代。恋愛感情がないのにつきあってみたものの、やはり恋愛とは何か分からなかった。田名さんの場合は接触もダメだそうです。同性愛ではないかと思ってみるも、そうでもない。死を意識したこともある。

番組では登場した田名さんに様々な質問「友情とかはあるのか」「性欲はあるのか」などがありました。針間克己先生は「異性愛者が同性に興味を持たないように、無性愛もおそらくこのまま」とコメント。

親にカムアウトしたら親が自分の愛し方が悪いと責めるのではないか、また親に絶縁されるのではないかと悩む田名さんにアドバイスが寄せられたり。将来は同じアセクシャルの人たちと一緒にシェアハウスのような共同生活ができたら・・と語る田名さん。

江角さんが「人の絆にはいろいろな形がある(恋愛以外にも)」と最後にコメントを述べてくださり、暖かい感じで番組が終了しました。

いやー、田名さんが総攻撃を受けるみたいな感じにならなくて良かったです。
田名さん、番組制作に携わった方々、お疲れ様でした。

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では補足などを書きたいと思います。
  • asexualと無性愛(またはエイセクシュアル、アセクシャル、アセクシュアル、Aセクシャル)の違い
番組ではasexual=無性愛と紹介されました。しかし、厳密に言うと両者の定義は異なります。
英語圏ですと「An asexual person is a person who does not experience sexual attraction.(Asexual Visibility and Education Networkのサイトより)」がおそらくもっとも一般的な定義です。「性的魅力を経験しない」、とシンプルな定義ですね。
だからたとえば、セックスは全く興味ないけれど、配偶者が求めてくるから相手のために応じる場合も、asexualityになりえます。プラトニックラヴでも、asexualityになりえるんです。
日本語の無性愛については、性的な行為がダメ&恋愛感情が分からないの両方がそろった場合、という定義のようです。
ちなみに私自身、エイセクシュアルの定義をあまり厳密に定義せずに活動をしてきました。その理由については、別の記事で述べたいと思います。
  • エイセクシュアルと結婚
この番組の特集で「結婚しない女性」とタイトルがつき、それに無性愛者が登場したため、おそらく「アセクシャル=結婚しない」と思われた方もいるかと思います。しかし現実にはそうではありません。
ノンケの方と結婚された方もいます。エイセクシュアル同士で結婚したケースもあります。
  • エイセクシャルは一生変わらないか
番組では"無性愛に詳しい"針間先生が登場し、有田さんの「恋愛出来るようになるんですか」という質問に対し「 おそらくこのまま」と発言されました。(っていうか針間先生いつから無性愛に詳しくなったんですか、GIDが専門の記憶があるんですが^^;;)
私の知っている範囲では、変化するケースは存在します。エイセクシュアルとして知り合って、その後、何年か経って恋人ができた人とか。
ただ、番組で「恋愛するようになる可能性もあります」と言ってしまったら、おそらく「じゃあ、田名さんが恋愛できるようにするにはどうしたらいいか」という方向に、話が行ってしまっただろうと思うんです。そうなると、無性愛者であることを否定されるわけだし、恋愛できない自分を治すことにエネルギーを費やすことになってしまう。
だから「無性愛者であることを肯定する」という意味で、「おそらくこのまま」と精神科医である人が言ってくれたことは、あの番組においては有意義だと思います。
  • 田名さんのアセクシャルヒストリー
*学生時代に、同級生との会話で自分が恋愛感情が分からないことに気づいた。
私が気づいたのも、同じようなきっかけでした。10代で、周りのクラスメートが恋愛するようになって、あ、自分は違うなと。

*学生時代に告白され、恋愛感情がないままつきあってみるも、うまくいかなかった。同性愛者ではないかとも思ったが、違った。
私は20代のときに異性とお付き合いしたことがあります。それでやはり性行為は好きになれなかったし、なんでこれがそんなに重要なのか分からなかった。ただ、私の場合は触れられるのも嫌、ということはなかったです。あと自分が同性愛者ではないか?と真剣に考えた事はありません。

*死への気持ち
これは私もありました。
私の10代、20代はエイセクシュアルって言葉自体がなかったんです。で、周りにも相談出来る相手もほとんどいない。恋愛できない自分を否定し続けて、自殺手前までいきました。もちろん今は恋愛できないからって死のうなんて思いませんが。

*親へのカムアウトに悩む
これは私の場合、両親が毒親なのでありません。ただ親戚とかへのカムアウトは頭が痛い問題です。セクシュアルマイノリティって言葉自体分からない人たちなので。

*将来、無性愛の人たちと一緒に暮らせたら・・
数年前、私はミクシィでコミュニティを運営していましたが、目的の一つはこれでした。他のアセクシャルの人が言うのを聞いた事もあります。考えることはあまり変わらないですね。

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個人的に思ったこととしては、この動画を使って、親戚達に話そう(カムアウトですね)かなと。彼らも普段みている番組ですし、出演している芸能人も好意的なコメントをしているので、カムアウトに使いやすいんじゃないかと思います。

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