2013年7月23日火曜日

エイセクシュアリティとDSM-5(1):Female Sexual Interest/Arousal Disorder(女性の性的関心/興奮障害)について

今年(2013年)、American Psychiatric Association(アメリカ精神医学会)によるDSM(Diagnostic and Stastistical Manual of Mental Disorders、精神障害の診断と統計の手引き)の第5版が発行されました。


DSM-5

これを購入したのには理由があります。以前からDSMのHSDD(Hypoactive Sexual Desire Disorder、性的欲求低下障害)とエイセクシュアリティの関連性については英語圏で言われていました。(「HSDD asexuality」でグーグル検索すると、いろいろ出てきます)
DSMは日本の精神医療で用いられる基準の一つです。なので、今年第5版が出ると知り、いずれ日本語版も出ますけれども、オリジナルの文をチェックしておきたいと思い購入しました(一万円以上しました>_<;;)。
※私は精神医学の専門家ではないので、あくまでも参考にとどめてください。ほとんど日本で紹介されていないため、やむをえず私が書いています。以下の翻訳も私がしています。





今回の版では、男性と女性に分けて名称がつけられていました。
「Sexual Dysfunctions」の項、

女性・・Female Sexual Interest/Arousal Disorder
(Diagnostic Criteria 302.72F52.22)
詳しくは433ページから

男性・・Male Hypoactive Sexual Desire Disorder
(Diagnostic Criteria 302.71F52.0)
詳しくは440ページから

女性は「interest(関心)」、「arousal(興奮)」で、男性は「desire(欲求)」と名称が違います。
今回の記事ではFemale Sexual Interest/Arousal Disorder(女性の性的関心/興奮障害)を見ていきます。

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  A. 性的関心/興奮の欠落もしくは明白な減少が、以下の項目のうち最低でも3つ現れる事 
1 性的行為への関心の欠落もしくは減少
2 性的/エロチックな考えあるいはファンタジーの、欠落もしくは減少
3 性的行為の開始の欠落もしくは減少、そして一般的にパートナーの(性的行為への)開始の誘いを受け入れない
4 性的接触中のほとんどもしくは全て(約75%〜100%)の性的行為の間、性的興奮あるいは喜びの欠落もしくは減少
(坂口ユキエ注・・単なる性的行為sexual activityとせずに、sexual encounters=性的接触と、まわりくどい書き方になっています。私の憶測ですが、DSM-5はあくまでも他者との性的行為に限定していると思われます。参考:「sexual encounter」の翻訳→http://medical-dictionary.thefreedictionary.com/Sexual+Encounter
5 いかなる内部/外部の、性的/エロチックな合図(例えば、書かれたもの、音声、ヴィジュアル)の反応における性的関心/興奮の欠落もしくは減少
6 性的接触中のほとんどもしくは全て(約75%〜100%)の性的行為の間、性器あるいは性器以外の感覚の欠落もしくは減少

B. Aの基準における症状は、少なくとも約半年間の持続を続ける(坂口ユキエ注:原文も意味が二重になっています)

C. Aの基準における症状は、臨床的にその個人に著しい苦痛を引き起こす。

D. 性的機能不全は、性的でない精神障害、もしくは深刻な関係の苦痛(例えばパートナーの暴力)の結果、もしくは他のストレス要因によって説明されるのはベターでない。また性的機能不全は物質あるいは投薬の結果、もしくは別の医学的症状の影響に因るものではない。

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まだまだ記述は続くのですが、私の翻訳スキルの限界もありますし、ここではこれくらいにします。
「性的行為に関心が無い」「性行為中に興奮しない」・・などはエイセクシュアリティに当てはまる可能性が大きいと思います。DSM-5では症状に「著しい苦痛」を本人が持つことを条件にしています。ですので当事者が明確に自身がエイセクシュアリティであるという自覚を持っており、これは生き方のひとつだと自身および周囲の人が認識出来ていれば、DSM-5は関係ないでしょう。

ただ、現在の日本でそこまでの認識が幅広く形成されているでしょうか・・
例えばの話ですが、パートナーに、エイセクシュアルと告げた上で交際しているにも関わらず性行為を要求されるとか、あるいは周囲の「あなたは病気だよ」というプレッシャーが強かった場合、本人がそれに耐えきれなくなり、メンタルクリニックに行く可能性もあると思います。

今回、男性のほう(Male Hypoactive Sexual Desire Disorder)を書けなかったので、時間があれば書こうと思います。


【2013年10月30日追記】
追加情報があります。
「DSM-5について:Anno Job Logより」

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